次々と男を乗り換えた女アナーキスト

明治の終わりに、大逆事件と呼ばれる事件が起こり、天皇暗殺を企てたとして秘密裁判の後に幸徳秋水は死刑を宣告され処刑されました。後に「でっちあげ」だったことが明らかになるこの事件では、秋水とともに妻の管野須賀子(かんのすがこ)も処刑されています。実は、秋水を巻き込んだのは須賀子であり、彼女がいなければ彼が処刑されることはなかったのです。ただ、事件がおこらなくても、秋水は須賀子の元夫によって殺されていたと言われています。彼女は次々と男を乗り換える淫乱な魔性の女だったのです。

「かいがいしい妻」のはずだった須賀子

20才のまだ青いアナーキスト荒畑寒村(あらはたかんそん)は、6才年上の美女管野須賀子と結婚しました。寒村は曲がったことの大嫌いな一本気な男です。寒村は須賀子とともにアナキズムの活動に参加した際に、取り締まりの警官を殴ったかどで服役することになります。1年半の服役中に、須賀子はしばしば獄中の寒村を訪れ、差し入れします。はたからは実に「かいがいしい妻」に見えたのですが、実はこのとき、須賀子は夫の先輩である幸徳秋水と毎日のように肉体関係を結んでいたのです。

当時の秋水はアナキズムのリーダー的存在で、寒村にとっては親分格に当たる人です。会社の社長が新入社員の妻を寝取るようなもの。いくら彼女が魅力的でセクシーな女であっても、秋水にも倫理観はありますので、自分から言い寄ることはありませんでした。しかも、彼には妻がいました。須賀子の方からモーションをかけ、彼の妻から夫を寝取ったのです。

実は次々と男を乗り換えていた須賀子

須賀子の初体験はレイプによるものでした。継母(まま母)の差し金で鉱夫に暴力的に犯されたのです。こうした環境によって社会に対する反発を強めアナキズムの運動に参加しました。20才で最初の結婚をしますが、小説家の宇田川文海に無理やりに手ごめにされ二度目のレイプ被害にあいます。しかし文海とはその後何度も身体を重ねることになりました。その頃から、男性遍歴を重ねるようになっていきます。妻のある新聞記者の愛人となりますが結婚問題でもめ、彼の友人に相談をもちかけるうちにその友人と愛人関係になってしまいます。そんなゴタゴタを繰り返した後に出会ったのが寒村でした。

しかし、新婚時代に寒村が服役してしまい、須賀子は体を持て余します。そんなときに目の前にいたのが、光徳秋水だったわけです。秋水にしてみれば「一度だけ」のつもりで抱いたのですが、女の方から「もう一度」と繰りかえし懇願され、ずるずると関係が続いていきました。須賀子の体はそれだけの魅力を持っていたのでしょう。須賀子は寒村に「秋水と結婚するから別れてくれ」と手紙を書きました。

これに怒った寒村は、出獄すると秋水と須賀子を殺そうと計画します。ピストルを手に入れ、彼ら二人が滞在している湯河原の温泉旅館に向かいました。しかし、このとき大逆事件が起きたのです。

寒村が温泉旅館に到着するよりも少し前に、秋水と須賀子は警察により連行されてしまいました。その後二人は処刑されます。もし、大逆事件がなかったとしても、ふたりとも寒村によって殺されてしまっていたでしょう。

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