夫婦の絆はありました

江戸時代の結婚は、家同士の結びつきや、お金の計算で成立するのが普通でしたが、夫婦の間には愛情も芽生えるものです。人間は一緒に暮らし苦楽をともにし、セックスをしていれば愛情が築かれるものなのでしょう。さまざまな愛憎話があります。

貧乏な夫婦の愛情

井原西鶴の「世間胸算用」に「小判は寝姿の夢」という話があります。貧しい夫婦があり、ある年の暮れに正月が越せそうにありません。妻が朝起きると、目の前に小判がありました。驚いて夫を起こしますが、小判は消えてしまいました。夫が夢の中でお金のことばかり考えているので、小判が幻となって現れたのでした。

妻はそれを悲しんで、乳母の仕事に就こうと考えます。小さな子供と夫のもとを離れ、住み込みで奉公する仕事です。1年分の給料を前払いで受け取り、夫に渡して家を出ました。しかし夫はその晩、住み込み先の家の事情を耳にします。妻を亡くした男やもめで、その男の死んだ妻と自分の妻がよく似ているという話です。

それを聞いて夫は受け取った1年分の金を持って、奉公先へ妻を取り戻しにいきます。「たとえ死んでも、妻を手放したくない」と思ったからです。二人は涙を流しながら年を越したという話です。江戸時代にも、お金よりも愛を大切にする夫婦はありました。

夫の愛人のために財産を投げ出そうとする妻

近松門左衛門の心中もののなかにも夫婦の絆を描いた話があります。「心中天の綱島」です。治兵衛という男には妻子がありましたが、遊女の小春と真剣な恋愛関係にありました。治兵衛には小春を請け出す財力がないので、いっそのことふたりで死のうと、心中を企てます。

しかし、あるとき、小春が客の武士に「心中の約束をしたが、本当は死にたくない」と漏らすのを聞いてしまいます。治兵衛は荒れ狂いますが、実はそれは治兵衛の妻が小春に頼んだ芝居。治兵衛が心中しそうだと感づいた妻は、小春に夫を死なせないで欲しいと頼んだのでした。小春は治兵衛と別れる決意をして、ウソの話を治兵衛に聞かせたのです。小春は一人で死ぬ覚悟を決めていました。

今度は、小春にそこまでさせてしまったことを後悔した妻は、自分の家財や着物や子どもの衣類を質屋に持ち込み、現金にして小春を請け出す決意をします。財産をすべて投げ出し、小春を請け出して夫と一緒にさせてやろうと考えるのでした。夫とその愛人のために、財産も妻の座も失う覚悟をするほどの愛情があったわけです。

江戸時代の結婚の多くは、家の釣合や財産を基準としたものでしたが、夫婦の強い愛情や絆を表すエピソードも数多くありました。

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