尼寺は出会い宿

井原西鶴の「好色五人女」に「八百屋お七」の話があります。実在の話をベースに西鶴が作った物語です。江戸の町の火事で焼け出された「お七」たち一家は寺で暮らすことになります。16才のお七は、同じく焼け出されて寺で暮らす同い年の吉三郎に恋をします。お七は何としても吉三郎とセックスしたいと考え夜這いを決行します。坊さんたちが忙しく出かけたある夜に、寺の中で寝ている人たちの間をすりぬけて、吉三郎の部屋までたどり着き、同室の小僧に金を払って退室させて想いを遂げました。

お寺は、災害時の避難所にもなりましたが、男女が密かに密会し性行為をする場所でもありました。

尼寺での出会い宿営業

「好色一代男」に登場する逸話には、さまざまな場所での性交や密会の手段が描かれています。トイレへの秘密の通路があり、他の人にわからぬように男女がふたりでトイレに入るという方法。戸棚の内側に通路を作りそこに男性を忍ばせておき、誰もいない時に出させて性交するという方法。畳の下に道が作ってあって、不倫相手を逃がす通路とするものもあります。

座敷の片隅に板が敷かれ、その下に男性があおむけに寝て、板にあいた穴からペニスだけを突き出すというものもあります。女性はそこにまたがりさえすれば、性交できるという寸法です。男性と寝ているところを人に見られても大丈夫なように、老婆の着る着物と数珠を男性につけさせておくという方法や、風呂場の天井から縄梯子をたらし、女と二人でのぼって屋根裏で性行為をする方法などもあります。

尼寺での出会い宿営業

「吾妻婦理」という艶本には、武家屋敷の女中たちが芝居見物の帰りに恋人と落ち合って、織物商の2階に上がって性交するという話もあります。女中たちは日ごろ外出ができないため、たまに外に出た時にはセックスしたいと考えますが、場所がないためこうした店を貸してもらっていたようです。織物屋は、なじみの客に対するサービスとして、ラブホテル営業もしていたわけです。

このような、店舗や自宅の一部を「ラブホテル」として貸し出す商売は、さまざまな物語に登場しますので、実際にたくさんあったものなのでしょう。仕出し屋の2階、貸本屋の2階などもありますし、吉原の火事の後では、普通の民家の2階で「吉原」が営業されていたという話もあります。

「好色一代男」には、尼寺が「ラブホテル」営業をしている話も出てきます。利用客は娼婦などではなく、糸屋の売り子の女、呉服屋に雇われた行商人の女、職人などが、男性を連れ込んで性行為をする場所として描かれています。江戸の女性たちは、セックスに積極的だったのかもしれません。

江戸時代には、さまざまな場所がラブホテルとして使われていました。お寺で性行為をすることもタブーではなく、尼寺がホテル営業をしていたこともあるようです。

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